ジャンゴ 繋がれざる者を知る

奴隷問題・人種差別を題材にした映画

人間が生きていれば一度は必ず出くわす事になる、差別されるという出来事。日本では縁遠いと思われがちですが、筆者としては子供の頃はそうした体験を何度となく経験させられたものだ。自覚していたわけではないが、成長してから考えてみるとそういえばこれって差別ぽかったなぁと思い返す。だからといって怒りに打ち震えたり、どうしてそんなことをされたのだろうと悲嘆したり、といった感情は沸かなかった。よほど根に持つような事でなければ後腐れなく忘れてしまおう、というスタンスかもしれません。安直と思われるでしょうが、気にして引っ張り続けていたら人間は生きていけなくなります。

差別という問題について取り上げると、一番に考えさせられる問題といえば『人種差別』、そこから発展しての『奴隷問題』だ。これは誰もが勉強する、あるいは知るべき事実として記録しておきたいものです。日本でこうした問題は取り上げられることはあまりありません、では世界では積極的に考えられているのかというとそうでもないという。もちろん人権保護団体などの活動家たちは熱心に訴え続けているはずだ。いくら自由の国と謳われるようになったアメリカでも、未だ有色人種に対する差別から派生した奴隷という過去を完全に払拭しきれていいないのです。

テーマとして掲げている映画作品もある。その中にはアカデミー賞にも受賞した有名な作品もあれば、公の場で発表されることはなくても著名な作品も存在している。今回はその中から2012年に全米で公開された『ジャンゴ 繋がれざる者』という作品をピックアップしてみる。

ジャンゴ 繋がれざる者、概要

こちらの作品ではアメリカは19世紀半ば頃を舞台にした物語となっており、奴隷として連れて行かれそうになっていた黒人男性が賞金稼ぎの白人男性により救われ、彼に協力するというものだ。大まかな構図として見ると、テーマとして『人種差別・奴隷制度』といった問題が根底に根付いています。フィクション作品として描かれているため、どうしても現実味がないと感じる人もいるかもしれません。確かに作中では当時としてはありえない黒人の姿が見られますが、それはそれとして受け取っておこう。

ではまず簡単にストーリーのあらすじから見ていきます。

あらすじ

19世紀半ば、アメリカは白人社会と化し黒人たちを支配・隷属する立場にありました。人権など存在しない、消耗品のように扱われる彼らはただただ日々を生きることすら困難だった。そんな時代、とある日の真夜中に何人もの奴隷たちが売りに出されるために白人のスペック兄弟が地主の元へと移動する。そんな彼らの前に闇夜の中から突如として現れた一人の白人男性。自身を歯医者と名乗った男性は、兄弟が連れている黒人の中に探している人間がいると告げた。

じっくり探して行く中で、男性は一人のボロボロになった黒人男性を見る。彼はその黒人を購入するという、ところがスペック兄弟は売り物ではないとして銃を突きつけてきた。渡す気はない、その意図を悟った白人男性はスペック兄弟が引き金を引くよりも早く、2人を自身の銃で射殺した。

突然の出来事に奴隷として連れて行かれていた黒人たちはパニックに陥るが、白人男性は目当ての男性を連れてその場を去っていきます。黒人男性にすれば見たこともない白人男性であった、彼は後に自身の名である『キング』を明かします。キングもまた黒人男性に名前を問われたため、自身の名である『ジャンゴ』を告げた。

キングはジャンゴを奴隷として購入したのではなく、彼そのものを欲していたため奴隷としての身分を開放して自身とともに行動しろと要求してきます。キングの目当てはトリプル3兄弟と呼ばれる者たちを見つけることだった。その名を聞いてジャンゴは戦慄する、実は彼もまたその兄弟と因縁があり、ジャンゴの妻は彼らによって売られてしまったのです。ジャンゴは協力する条件として妻を取り戻す事を引き合いに出します、対してキングは条件を飲み込む上にさらに賞金の一部と馬、そして自由を保障するとまで確約してきた。

飲み込まないわけがない、まさに運命の巡り合わせのような状況にジャンゴとキング、黒人と白人が共にコンビを組んで目的を果たすために活動を始めるのだった。

クエンティン・タランティーノ氏の作品

この作品を作ったのは稀代の名監督、クエンティン・タランティーノ氏による作品となっています。随分と誇張した言い方だが個人的に見ても、彼の作る作品の世界観は気に入っている方だ。洋画はあまり嗜む方ではありませんが、タランティーノ氏の作るものについては興味を持つ機会は非常に多い。また俳優などではない裏方の人間である監督の名を初めて覚えたのも彼だ。

そうした事情を抜きにして話を進めても、当作品を見ていけば分かるように奴隷問題・人種差別の2つがこれでもかと取り上げられています。タランティーノ氏が作った映画らしい部分は所々に見られますが、奴隷制度が見えてくるかといえばそうでもありません。少々ネタバレとなってしまいますが、最終的にジャンゴは妻を取り戻して自分たちを苦しめた元凶を倒すという顛末で落ち着く。ラストに見せられたシーンからしても、奴隷だったジャンゴは最後に全ての元凶を創りだした黒幕を打倒する勧善懲悪作品となっています。終わり方については非現実的ですが、そこはそれだ。

ただ監督としてはアメリカの歴史において切っても切り離すことの出来ない奴隷問題についてはいつか作品に取り上げたいと考えていたという。そうした感情を感じさせるシーンが各所で見られましたが、歴史に忠実かと言えばそうでもない部分もあります。

奴隷同士の殺し合い

中でも批評家たちから目をつけられたのは、物語中盤においてジャンゴとキングがようやくジャンゴの妻を見つけてとある農場へと辿り着いた時のことです。そこでは奴隷の黒人同士を剣闘士に仕立てあげて殺しあわせる見世物が行われていた。観ていて不愉快になるものですが、農場主にすれば生きていても価値が無いものだとみなしている。それ以上の、またそれ以下の理由もない。ただ見世物として機能していればそれでいいとすら見なしていたのかもしれません。

タランティーノ氏曰く、こうした事が行われていたと語っているものの、実際にはかつて古代ローマで繰り広げられていたグラディエーターさながらの、剣闘士として戦わせていた記録は存在しなかった。ただ噂程度の情報レベルで囁かれていたというので、ありそうでなさそうな話といった解釈にした方が良いかもしれません。

差別を取り上げている

映画のテーマにもなっている奴隷制度、ひいては人種差別という問題。実際に海外へ旅行した時に出くわしたという経験もたまに耳にします。怒りを覚えてもう二度と利用しない、そう憤慨している人もいますがそこまでする必要があるのか、と個人的には思っている。

このご時世でそんな古臭い習慣にしがみついている方がおかしいかもしれません、ですが『差別問題は現在進行形で行われている』、これは事実だ。その事実から目を背けることは出来ません、だからこそタランティーノ氏もこのジャンゴを作りたかったと語っているのです。

ただタランティーノ氏が映画製作に当たっては、こんな胸中も明かしています。

『アメリカでは奴隷問題に対して、皆の過ちとして捉え、誰もがしっかりと問題を見つめていないと思う』

奴隷や差別、この問題は国のお偉いさん方の後押しも必要だが、それ以上にまず個人が問題と向き合うことが重要だと述べている。差別する方がおかしくなっている、という価値観こそまだ追いついていないと言われてしまう場合もある。それくらい奴隷問題や差別問題は世界共通の考えなくてはならないテーマなのです。

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